連載企画 07
更新日:2017年11月8日(水) 医療・病院のトレンドを知る
地域医療連携推進法人って
知っていますか?
人口減少社会を見据え、「競争から協調」へ
2017年4月2日、「地域医療連携推進法人制度」が施行されました。
これまで各医療機関はそれぞれの特徴を活かし、お互いに競争しながら共存してきました。しかし、わが国はすでに人口減少社会に突入しており、2048年には1億人を割り込み、2060年には8,674万人になると推計されています。そうしたなか、従来のまま競争し続けていては少ないパイの奪い合いになり医療が崩壊してしまいます。そこで「競争」から「協調」を推進し、より高い医療を提供するためにできたのがこの制度です。
具体的には、地域の病院や診療所、訪問看護ステーションなどの複数の医療機関や介護施設が参画して、1つの新しい法人をつくれるようにしました。医療業界においても、民間企業でいうところのホールディング制のようなしくみが可能になったのです。
地域医療連携推進法人がもたらすもの
複数の医療機関が連携して1つの法人になることで、いくつかのメリットが期待されています。
1つは、病床機能の分担です。たとえば、1つの法人になれば、地域のニーズに比べて急性期の病床が極端に多かった場合、急性期を減らして、その分を回復期の病床に回すことができます。訪問診療ができる医師が足りなければ、急性期で余裕のある医師を訪問診療の担当に回すなど、1法人内でさまざまな融通を利かせることができます。
国は急性期の病床を減らす分、回復期の病床を増やし、さらに在宅医療への移行を推進していますが、この制度はその流れをさらに推し進めるための政策ともいえます。
2つ目がコスト面で有利になる点です。1法人として購入することでスケールメリットが生まれ、医薬品、医療機器の購入などでコストを下げられる可能性があります。また、検査を行う病院を1か所に集約するなどすれば、医療機器を集約化でき、余計な医療機器を購入する必要もなくなります。
3つ目が医療レベルの向上です。大きな病院がもっている研修制度を、診療所や訪問看護ステーションなどのスタッフも受けられるようになることで、医療レベル全体の底上げが期待できます。
4つ目が人材融通による定着率のアップです。たとえば、急性期の病院に勤めているナースが出産すると、退職して残業の少ない回復期病院に転職するケースがあります。しかし、1つの法人に急性期も回復期もあれば、同じ法人内での「異動」で済むため、退職することなく職場環境を変えることができます。
一方で課題がないわけではありません。給与体系や社会保障、退職金制度などは各医療法人によって異なっているため、1つの法人になるにあたり、その部分の差をどうするのかという問題があります。
“大企業化”によって増える選択肢
この制度を利用した法人はすでに日本全国で生まれています。近隣12の市町村の22もの医療・介護施設が1つになったものから、へき地や離島への医師派遣を目ざした法人もあります。
1法人で、病院から訪問看護ステーション、介護施設、離島まで──。
医療法人の“大企業化”により、ナースにさまざまな選択肢が広がることだけは間違いなさそうです。
メリットとイメージ図
メリットはコレ!
|