連載企画 02
更新日:2017年10月4日(水) 医療・病院のトレンドを知る
国際化が進むと
病院って
どうなっていくの?
急激に増える外国人に病院も奮闘中
「医療の国際化」には大きく2つの柱があります。1つは増え続ける外国人への対応。もう1つが、医療による経済発展です。
まず外国人への対応ですが、近年の訪日外国人の推移を見るとその必然性がわかります。2012年の訪日外国人の数は850万人にすぎませんでしたが、2016年は2,400万人を記録。在留外国人の数も、2012年の203万人から2016年は238万人にまで増加しています。
こうした状況を受けて、今、日本の病院でJCI認定を受けるところが増えてきました。「JCI」とは「Joint Commission International」の略で、1994年に医療機関を評価するために設立された病院評価機構(JC:The Joint Commission)が元になって設立されたものです。高品質な医療と患者さんの安全性を評価するのを目的としており、世界でももっとも基準が厳しいとされ、取得できるのは世界でも数%の病院だけといわれています。
2017年8月末現在、日本国内では24の医療機関がJCI認定を取得。最初の取得は2009年で、2012年までの4年間で6医療機関が取得したにすぎませんでしたが、その後の4年半で18の医療機関がJCI認定を受けており、取得が加速しているのがわかります。
JCI認定医療機関(2017年8月末現在)
- 亀田メディカルセンター
- NTT東日本 関東病院
- 介護老人保健施設老健リハビリよこはま
- 聖路加国際病院
- 湘南鎌倉総合病院
- 聖隷浜松病院
- 社団医療法人財団 慈泉会 相澤病院
- メディポリスがん粒子線治療研究センター
- 済生会 熊本病院
- 葉山ハートセンター
- 東京ミッドタウンクリニック
- 日本赤十字社 足利赤十字病院
- 埼玉医科大学国際医療センター
- 順天堂大学医学部附属順天堂医院
- 国際医療福祉大学 三田病院
- 札幌東徳洲会病院
- 南部徳洲会病院
- 倉敷中央病院
- 湘南藤沢徳洲会病院
- 三井記念病院
- マックシール巽病院
- 石巻赤十字病院
- 中部徳洲会病院
- 彩の国東大宮メディカルセンター
「JMIP認証」を取得し、外国人に対応できる病院に
しかしJCI認定は、「国際的に高い医療を提供している証」にはなりますが、「外国人に対応できる証」ではありません。
そこで2011年、厚生労働省が「JMIP(ジェイミップ)認証」を設けました。「Japan Medical Service Accreditation for International Patients」の略で、日本語では「外国人患者受入れ医療機関認証制度」といいます。
一般財団法人日本医療教育財団が、「受入れ体制」「患者サービス」など大きく5つの分野に分けて評価します。これにより、英語・中国語など多言語による対応、宗教の教義に合った食事の提供などが求められるようになりました。2017年8月末現在、29の医療施設が認証を取得しています。
JMIP認証医療機関一覧(2017年8月末現在)
- 函館新都市病院
- 札幌東徳洲会病院
- 埼玉医科大学国際医療センター
- 千葉西総合病院
- NTT東日本関東病院
- 国立国際医療研究センター病院
- 東京西徳洲会病院
- 東京都立広尾病院
- 国際医療福祉大学三田病院
- 東京都済生会中央病院
- 虎の門病院
- 東京高輪病院
- 湘南藤沢徳洲会病院
- 湘南鎌倉総合病院
- 恵寿総合病院
- 木沢記念病院
- 名古屋共立病院
- 藤田保健衛生大学病院
- 医療法人財団 康生会 武田病院
- 京都武田病院
- 大阪大学医学部附属病院
- 岸和田徳洲会病院
- りんくう総合医療センター
- 岡山大学病院
- 津山中央病院
- 福岡記念病院
- 九州大学病院
- 社会医療法人緑泉会 米盛病院
- 南部徳洲会病院
医療ツーリズムと病院丸ごと輸出
こうした外国人への対応のほかに、もう1つの流れが、医療による経済発展です。その柱の1つが医療ツーリズムです。海外の患者さんを日本に呼び込むというもので、治療はもちろん、人間ドックなどの検診、美容なども含まれます。なかでも日本は重粒子線がん治療においては世界でもトップクラスの実績を誇っており、豊富な施設数を有するだけに大きな期待が寄せられています。
もう1つの柱が、病院丸ごと輸出です。文字通り、海外に日本の病院をつくるもので、医療機器は日本製のものを入れ、それをきっかけに日本製の医療機器を浸透させようという狙いです。日本政府は2020年に医療関連の世界市場において1.5兆円を獲得することを目指しています。2016年には政府の支援を受け、カンボジアで病院丸ごと輸出の第一弾となる病院が開院しました。今後も新興国を中心に、10か所ほどの病院を設ける計画が進んでいます。
日本の病院に入職したら、海外の病院に赴任することになった──。
そんな時代は、すぐそこまで来ています。
JCIとJMIP
JCI | JMIP | |
---|---|---|
目的 | 高度な医療提供と患者の安全を評価 | 外国人患者の受入れ体制を評価 |
審査者 | JCI | 一般財団法人日本医療教育財団 |
対象 | 世界の医療機関 | 日本の医療機関 |
審査内容 | 「患者安全」「感染管理」「医療の質と改善」など、14分野について評価 | 「受入れ体制」「患者サービス」など大きく5つの分野に分けて評価 |
認定・認証数(国内) (2017年8月末現在) | 24医療機関 | 29医療機関 |