連載企画 08
更新日:2017年11月15日(水) 医療・病院のトレンドを知る
進化し続ける
チーム医療の今
効率的かつ最良の医療を提供するために欠かせないチーム医療
「チーム医療」とは、医師、看護師、管理栄養士など多職種の医療スタッフが連携を図り、それぞれの専門性を発揮・補完し合って行われる医療のことですが、今、その必要性が叫ばれており、実際に多くの病院でチーム医療が実践され始めています。
国もチーム医療を推進し、2010年に厚生労働省で「チーム医療推進会議」が設置されました。その後2009年には 「チーム医療推進協議会」という団体が設立されており、日本看護協会、日本栄養士会など、2017年現在19もの団体が参加しています。
チーム医療が推進されている背景には、団塊の世代全員が75歳以上の後期高齢者となる2025年問題があります。医師や看護師などの数を飛躍的にふやすのが難しいなか、より効率的、かつ最良の医療を提供するための方策の1つとしてチーム医療が注目されているのです。
従来からあるチーム医療
チーム医療として以前から実践されてきたものに「栄養サポートチーム(NST)」があります。1970年代から欧米に普及し始め、1990年後半からわが国にも導入されるようになりました。
栄養状態が悪いと治療しても回復しにくく、褥瘡や感染症、合併症などを起こしてしまうことから、患者さんの栄養状態を管理するために、管理栄養士、薬剤師、看護師、医師などがチームを組んで栄養支援を行います。
また、体位変換や姿勢、食事摂取などによって褥瘡を予防する「褥瘡対策チーム」も栄養状態との関連が深いこともあり比較的早い時期から導入されてきました。
これらの医療チームのほかに、今、大手病院を中心に次々と新しい医療チームが立ち上がっています。
続々生まれている新しいチーム医療
今、病院内に設けられつつある主なチーム医療を下に紹介します。
感染対策チーム(ICT)
病院内での感染予防を目的としたチームです。日常の感染予防策のほか、感染予防のための職員への教育なども行い、実際に感染が起こった場合に備え、マニュアルをつくるなども重要な役割となります。
呼吸サポートチーム(RST)
人工呼吸器で管理されている患者さんは、痰がたまりやすかったり、異物が肺に入って誤嚥性肺炎になるなど、さまざまな問題が起こりやすい状態にあります。そこで、そうした事態を防ぎ、問題が発生したときにはスピーディに対応できるようにチームで対応します。
緩和ケアチーム
がん治療では、疼痛や呼吸困難、精神的な不安などがつきまといます。チームとして疼痛コントロールや、精神面での落ち込みや悩みを軽減するための緩和ケアを行うことで、QOL(生活の質)を高めていきます。
認知症ケアチーム
認知症になると、せん妄(幻覚や錯覚)によって興奮したり、もの盗られ妄想、気力がなくなるなどの症状が出たりします。認知症ケアチームは医師、看護師、作業療法士などが協力し、患者さんの混乱を少なくしてスムーズに退院できるようにサポートします。
口腔ケアチーム
歯周病などで口腔状態が悪いと、肺炎などさまざまな病気にかかりやすくなります。そこで、医師や歯科衛生士などがチームを組み、口腔内を清潔に保っていきます。
がん治療サポートチーム
がんは、痛み、抗がん剤の副作用、吐き気、治療費など身体的・精神的にさまざまな問題を抱えた病気です。これらの問題に対応し解決するためにつくられたチームです。ソーシャルワーカーが参画する病院もあります。
糖尿病チーム
糖尿病は神経障害、網膜症、腎症などの合併症があり、重症化すると腎不全になって透析が必要になったり、失明してしまうこともあります。そうしたことを防ぐためにつくられたチームです。
主なチーム医療
チーム名 | 目的 |
---|---|
栄養サポートチーム(NST) | 良好な栄養状態の維持 |
褥瘡対策チーム | 褥瘡の予防と発生時の対応 |
感染対策チーム(ICT) | 院内感染予防と発生時の対応 |
呼吸サポートチーム(RST) | 人工呼吸器装着患者さんへの疾患予防と緊急時の対応 |
緩和ケアチーム | 疼痛コントロールなどによるQOLの向上 |
認知症ケアチーム | 認知症ならではの症状を抑え退院までサポート |
口腔ケアチーム | 口腔内の衛生状態の維持 |
がん治療サポートチーム | がんに伴うさまざまな問題の解決 |
糖尿病チーム | 糖尿病の合併症と重症化の予防 |
チーム医療での看護師の役割
病院では多くの場合、患者さんと接する機会がいちばん多いのが看護師です。そのため、患者さんのふだんの様子をもっとも知っているといえる看護師は、患者さんの状態をチームに伝える非常に重要な役割をもっているのです。